最終日

私はとあるジャズレストランでウェイターをしていた。
それは二十代前半から2年半程の期間だった。
まだ店舗は運営の初期の頃で、関わったスタッフは皆活気があり、変化の日々を過ごしていた。

スタッフの方々は良い方ばかりだったが、店長はとても癖のある人だった。
しかしその店長はブランドスーツを着こなし、
颯爽とした風貌で威厳を持って店を率いるカリスマ性のある店長で、
皆から慕われていた。

そこに出勤するため、今も尚まだそのレストランのスタッフとして出勤し、久々にその当時の仲間たちと一緒にウェイターとして働くという夢。

この夢を数えきれない程、見続けてきた。
いつもこの夢を見る度に、シチュエーションや店の雰囲気などが異なるのだった。

またこの夢か~、と思いながらも、
その夢を見る度に懐かしい日々を反芻し、
深い縁がありそして、貴重な経験をする場として、
私の人生の中で欠く事の出来ない、二年半だったのだと思い返していた。

そして今日もこの夢を見た。


私はそのレストランへまた出勤していた。
周りには制服に着替えたウェイターたち、
私の顔見知りが沢山居る、
当時のままの顔だ。

しかし見たことの無い若いスタッフも沢山居た。
私が名前すら知らない新人は、
古株のスタッフと共に、
仕事の段取りを真剣に話し合っていた。

私はかれこれ何年ぶりなのだろうと思いながらも、
制服に着替えるべく準備をしようとしていた。

しかしバックヤードでは、
着替え終わったスタッフでごった返していて、
ロッカーの中をあれこれ探すスペースが無かった。

しかたなく私は近くにあった青紫のサテンの蝶タイと、
同生地のカマーバンドを付けていた。

しかしこの制服と同じスタイルをしているスタッフは一人も居なかった。

このスタイルはこのレストランの初期のスタイルで、
どうやら今は使用していないように思えた。

その時マネージャーが来たため、
着ている制服についてワケをつたえた。

りゅうじ:「マネージャー、制服が探せなくてこれしか無かったのですが、これはもう今着てはまずいですかね。」

マネージャー:「あ、それはもう今使ってないんですよ。
今はスーツかベストですね。」

りゅうじ:「そうですか~、私が着るものは無いみたいなんです・・・。」

マネージャー:「じゃあ、ステージ中に何か天井にレーザーを放つとか、ギターの演奏中に何か派手な演出するとか。」

りゅうじ:「いや~そういう訳にも行かないですよね~。私はウェイターですし。でもウェイターの仕事はもう務まらないかも知れないし・・・。今日は帰った方が良いですかね。」

マネージャー:「いや、そんな事ないんじゃないですか。
りゅうじさんて幾つになりました?」

りゅうじ:「57歳です。」

マネージャー:「あ~そんなになりましたかぁ・・・。」

りゅうじ:「そうなんです・・・。」

マネージャー:「もしかしたら決済関連のシステムだったら、
活躍の場があるかも。」

店長:「そうだな、でも経験者だったとしても、かなり厳しく審査すると思うから、結構難しいかな~。」

りゅうじ:「そうですか、私はIT系の経験者でもあるから、可能性はあるかも知れません。だけど、私はウェイターとしてここで働いてきたので・・・。

今日はやはり帰ります。皆に迷惑をかけることになったりしたら大変だし、今日はここで働くことは、今後はもう無いという事を皆さんに伝えに来たのだと、今思いました。」

マネージャー:「・・・。また遊びに来てくださいよ。」

こんなやりとりをして、最後は夕刻の喧騒の街並みの中をマネージャーと二人で歩いて別れの挨拶をした。


現実世界でも別れの事象があったから、リンクして見た夢だったのだろう。

繰り返し見るテーマの夢は、その経験が終わっても尚、
成長の学びを続けるために夢として体験を継続し、
現実の世界の実経験とともに今の自分がそこに照射される。

そして意味のある夢には、必ず高次の存在達からのメッセージが含まれている。そのメッセージが何なのか、それを感じ取ることが成長に繋がる。

感じることができたら、その鍵を持って次の扉を開くんだ。
そうしてまた次の段階へ進み、魂の成長の旅は終わる事が無い。

私がウェイターだった頃の夢は最終日を迎えた。
自分から身を引いて、私はもうここには来ませんと宣言したのだ。

もうこの夢は見ることが無いかも知れないし、
また別の示唆を得るために、再びこの場が夢となって現れることがあるかも知れない。

若く、想い出深い時代の経験は、色あせることなくそこに居続ける。
当時のスタッフ皆との出会いがあって、その輪の一員として自分の居場所があった。

沢山の経験をさせてもらい、沢山の迷惑をかけ、沢山の事を教えてもらった場所と関わった人達に感謝を。

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